もの作りとわたしたち
仕込みの季節がやってきました。
本革製品のブランドは山ほどありますが、きっとどんなブランドにも色々なストーリーがあるかと思います。
個人作家の方であれば、本革という素材に魅了されて、、という方も多いと思いますし、
単に好きというだけでは言い表せない本革の奥の深さのストーリーがデザインする人、もの作りをする人の中にあるかと思います。
企業の方ではどうでしょうか。本革を扱うというだけで、かっこいいと単純に感じるファッション業界も多く、
形から取り扱ったという企業サイドも少なくはないかと思います。
では、私たちは??
わたしたちの本革ともの作りの結び付きは、もっと奮闘的なものでした。
とにかく、”本革”という魔物にやられっぱなしで、最初の10年以上は失敗の連続。
革に魅了させる時間も、優雅にもの作りをする時間もなく、
朝起きて悩み、夜遅くまで悩み、また次の日もその次の日も悩み、
今思えば、よくやっていたなと感心するくらいです。
でもこういう話は日本のタンナーさんに聞くと常識で、恐らく農業、漁業、林業、建築業、医療、
日本で生活を支えてくれる仕事の多くが、こういう奮闘ばかりなのではないでしょうか。
勿論家業を営む方でしたら、先代の知恵や技術を受け継いで、先代がだいぶ苦労してくれたおかげで、、、
という方もいらっしゃるかと思いますし、それこそ優秀なところでは、様々な計画やあらかじめ準備したことで、
わたしたちよりもうまくやっている人もいるかと思いますし、
もっと先の作り手の方が苦労して、そっちの苦労さを知らないってこともあると思うので、
比べることはできないのですが、ものを作るってことは消費者の手に届くまで苦労の連続なのですね。
ただ切ないことに、ものを作る人はいつも消費者の事を考えて作っています。
消費者というと、真剣なもの作りの人は、”商売の為だけにはやっていない!”とこだわって作っているところも多いかもしれませんが、
それでも”使う人を想って”には違いないから、想いの矢印はやはり消費者を向いていると思われます。
その為に仕込んだり、商品を潤沢に並べているのだって、裏をかえすと販売元が苦労して置いているという現実には変わりないのです。
仕込みの季節が来るといつもそんなことを考える毎日です。